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報恩講料理報恩講料理

世界遺産の山里に伝わる郷土料理

平成7年(1995)、岐阜県白川郷とともにユネスコの世界遺産に登録された「五箇山(ごかやま)合掌造り集落」。富山県南西部の南砺市(なんとし)、岐阜県と隣接する緑深い山々の懐で、日本の山村の原風景を今に伝えています。

富山県は“真宗王国”と呼ばれるほど浄土真宗が浸透していますが、とりわけ五箇山地域は信仰があついことで知られています。浄土真宗開祖・親鸞聖人(しんらんしょうにん)の命日(旧暦11月28日)前後、その遺徳をしのんで営む「報恩講(ほうおんこう)」は、真宗を心のよりどころとする五箇山の人々にとって1年で最も大切な仏事といえます。親類縁者を招き、ともに念仏を唱え、僧の説教に耳を傾ける…その後、集った人々をもてなすために用意されるのが報恩講料理です。

報恩講

あつい信仰に根ざしたおもてなし

報恩講のもてなしの準備は、春まだ浅い頃から始まります。雪解けの山に芽吹くワラビやゼンマイなどの山菜は、良いものは取り分け、普段用とは別に保存します。豆やイモ、野菜などもその年に収穫した中で一番出来の良いものを、大切にとっておくのが五箇山では当たり前のこと。報恩講では、これらのまさにとっておきの食材を丹精こめて料理し、鮮やかな朱塗りの膳に並べます。

料理の内容は地域や家により多少違いますが、平(たいら)・上平(かみたいら)地域の場合、おおむね膳に並ぶのは、おひら(煮しめ)、中盛り(ゼンマイのからし和え)、つぼ(金時豆またササギ豆の甘煮)、じんだ(ひいた青豆のあえ物)、こじり(しいたけ・ニンジン・こんにゃく・豆腐・スス竹などの煮物)に、ごはんと小豆おつけ。さらに赤カブの漬け物など膳にのりきらない料理が、重箱や大鉢に盛って出されます。

どの料理も器にあふれんばかりに盛りつけるのが報恩講の習わしです。それは五箇山の人々の親鸞聖人への深い敬愛とともに、大らかなもてなしの心を物語っています。

報恩講料理

味にこめられた心がおいしい

郷土色豊かな数々の料理の中でもご注目いただきたいのは、煮しめに欠かせない五箇山豆腐です。一人前の大きさが一般的な豆腐一丁分はありそうな迫力の一品です。また小豆が親鸞聖人の好物だったことから、小豆入りになったといわれる具だくさんみそ汁「小豆おつけ」など、素朴でありながら豪勢、懐かしくもあり新鮮でもある、独特の味の世界に出会うことができます。

しかし何と言っても報恩講料理の味わいを奥深くしているのは、一品一品にこめられた人々の心なのかもしれません。年に1度のごちそうでもてなし・もてなされ、自然の恵みを分かち合いながら語らい、人と人のつながりも深める…。時代の変化にゆるがず受け継がれてきた報恩講料理は、味わう人の心まで豊かに満たしてくれるのではないでしょうか。

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