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つぼ煮つぼ煮

立山信仰の宿坊でふるまわれたごっつぉ

立山山麓の大自然が広がる立山町芦峅寺(あしくらじ)。ここで古くから精進料理として作られてきたのが「つぼ煮」です。

江戸時代、芦峅寺は立山信仰の里として人々に崇められてきました。芦峅寺には「宿坊」とよばれる寺院や宿、住まいをかねた建物が点在し、信者を「道者衆(どうしゃしゅう)」と呼んで大切にもてなしてきました。その宿坊料理のひとつがつぼ煮でした。

「つぼ椀」と呼ばれるふた付きの朱塗りのお椀に盛られたことから、そう呼ばれるようになったつぼ煮。地元の人々はつぼ煮のことを「つぼ」と呼び、今でも葬式や法事など地域の年中行事に欠かせない「ごっつぉ」(富山弁で「ごちそう」の意味)として親しまれています。

立山町芦峅寺

この地の歴史と知恵が詰まった滋味

つぼ煮の主役はコゴミとよばれる山菜。立山山麓に遅い春が訪れる4月から5月、地面から一気に芽を出します。家々では、採れたてのコゴミを茹でて天日干しにし、つぼ煮用として一年間大切に保存します。

このコゴミと、地元で採れるサトイモやニンジン、厚揚げが定番の材料。食べやすく、見た目にも美しいように一口大に切り、昆布のだしで煮ます。味付けは家々で異なりますが、醤油と酒が基本。天日干ししたコゴミをもどすため、下準備は前の晩から行います。作って一晩寝かせ、味がしみ込んだ頃が一番美味しいとも言われます。

美しい椀に入ったつぼ煮を一口いただくと、ふっくらしたコゴミ、粘り気のあるサトイモ、ニンジンの旨味が溶け合い、口の中に広がります。

近年では、正月や祭りなど祝いの席でも振る舞われるようになったつぼ煮。その際には、めでたさの意味を込めて茹でた小豆を10粒ほど入れるそう。山里の保存食から生まれたつぼ煮には、立山信仰の歴史と人の知恵がつまっています。

つぼ煮

もてなしの心は、時を越えて受け継がれる

芦峅寺の郷土料理として受け継がれているつぼ煮。布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)に合わせて開催される「ごっつぉ祭り」では、地元の女性たちがつぼ煮をはじめとする故郷の味をふるまいます。

祭りでは、ヨモギを餅粉と混ぜてこんがりと焼いた「やきつけ」、ジャガイモを味噌で甘辛く味つけた「かっつる」など地元のうまいもんが並びます。この地ならではの美味しさは、子どもたちにも人気を集めています。

「芦峅寺の厳しくも豊かな自然の中で食べると、つぼ煮はより美味しく感じる気がします」と話すのは、芦峅寺で生まれ育った佐伯照代さん。「地元の集まりなどがある時は、前の日から腕をふるいます。気持ちをこめて作った料理で、食べる人にホッとしてもらいたい」と佐伯さん。

立山のふもとで、古くから人をもてなしてきたつぼ煮。心づくしのやさしい味わいは、時を越えて、訪れる人を癒しています。

レシピ紹介!つぼ煮レシピ紹介!つぼ煮

材料4人分

干しコゴミ100g
ニンジン中2本
里芋10個
厚揚げ2枚
しょうゆ適量
砂糖適量
みりん適量
だし汁適量
サラダ油少々
つぼ煮
  1. (1)干しコゴミを煮てもどし、元の大きさに戻るまで水にさらしておく。
  2. (2)ニンジン、里芋、厚揚げを食べやすいように小さく切る。
  3. (3)鍋にサラダ油をひき、ニンジンと里芋をよく炒め、もどしたコゴミを入れさらに炒める。
  4. (4)だし汁を加えしょうゆ、砂糖で味を調える。
  5. (5)厚揚げを入れてさらに煮込む。

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